檀一雄の句碑

大安寺集落改善センターから阿賀野川の堤防を登ったところに、大きな石碑が川を望むように建っています。

集落改善センターの駐車場から見た堤防上の石碑

この碑は1996年に建立されたもので、碑面には「亡友の泳ぎし跡か川広し 大安寺にて 檀一雄」と刻まれています。檀一雄(1912~1976)は、『火宅の人』で有名な作家です。彼が「亡友」と懐かしんだ人こそ、大安寺ゆかりの坂口安吾(1906~1955)です。碑の横にある「新津安吾の会」の解説板によれば、1966年9月16日に新津へ講演会に招かれた檀が大安寺に立ち寄り、この句を色紙に認めたそうです。

碑面

檀は、薬物中毒で時には問題行動を起こす安吾を理解し、支え続けた友人でした。安吾が起こした珍事件としてよく語られる「ライスカレー100人前事件」(安吾が三千代夫人にライスカレーを100人前注文させた)は、1951年、安吾夫妻が檀の家に居候していた時分に起こったもので、檀も安吾夫妻と一緒に次々届くライスカレーを食べたそうです。

檀は安吾の死後、『坂口安吾選集』(東京創元社版)の刊行に尽力し、後年『小説坂口安吾』を執筆しています。また、1957年6月に安吾の「ふるさとは語ることなし」の文学碑が寄居浜に建立された際は、発起人の一人となって、除幕式にも参加しています。

檀一雄の句碑

「私の生涯の出来事で、この人との邂逅ほど、重大なことはほかにない」(『坂口安吾選集』第1巻解説)と記した檀は、大河・阿賀野川の流れに、安吾の大らかな生き様を思い浮かべていたことでしょう。

なお、安吾が阿賀野川を泳いだことがあったのかは、よく分かりません。

参考 坂口安吾デジタルミュージアム