「あちらこちら命がけ」文学碑

新津駅東口へ移された「あちらこちら命がけ」文学碑

今年(2025年)、新潟薬科大学の新校舎建設に伴い、安吾の「あちらこちら命がけ」文学碑が新津駅東口の駅前広場へ移転されました。この碑は1994年、市民団体「坂口安吾文学碑を建てる会」によって、新津駅東口近くのポケットパークに建てられたものです。

「あちらこちら命がけ 安吾」

正面(どちらが正面なのか、どちらも正面なのか?)に刻まれた文字は、安吾が三千代夫人に書いた色紙を写したもので、「安吾の文学精神や生き方を端的に表して」いるそうです。

移転前は植え込みがあり、碑の裏側を見るのが難しかったそうですが、移転によって裏面?もよく見えるようになりました。裏面には、1938年に安吾が発表した長編小説「吹雪物語」の自筆原稿の一節が刻まれています。

「吹雪物語」直筆原稿の一節

……汽車が新津へついたとき、澄江は思ひきつて立ち上つた。もう一度こつそり新潟へ戻つて行かう。そして卓一に一眼会はふ。澄江は駅へ手荷物を預けた。そしてうらぶれた待合室の一隅へ腰を下した。夜がきた。澄江は然し動かなかつた。

「あちらこちら命がけ」の奔放な字と違って、原稿用紙のマス目を丁寧に埋めるような字が印象的です。

参考 坂口安吾デジタルミュージアム